臨機応変に~ハプニングにも学びあり~

2014年09月08日

リョータくん、6年生。
夏休みに入ってすぐに玄関のドアを開けると、
松葉杖をついて、足に包帯をグルグル巻いた姿で立っていました。

「んはあ゛あ゛ぅぅぁああぁあああ!!マジですか?!」

思わず奇妙な声で叫んでしまいました。

リョータくんには、ミュージカル『大きなかぶ』のおじいさん役をお願いしていたのです。
唯一ソロの場面もあり、ステージに出ずっぱりだったのです。


この夏、急激に身長が伸び、変声期も訪れたようで、
歌のキーでは、日に日に声が出にくくなってもいました。

年頃にしては嫌がる素振りも全くなく、感情を込めてセリフを言ったり、
大きな声で伸び伸びと歌い、踊る姿に、
リョータくんの新たな一面を知ることとなったのでした。

なのに骨折!!!

発表会は2週間後。


ピーーーーーーンチ!!!


の、ふり(笑)


リョータくんと二人、いつものようにピアノの前に並んで座り、


深刻な相談


の、ふり(笑)


ぐりの頭の中では、松葉杖の姿を見た時から答えは決まっていました。
動けないなら座ってやればいいだけのこと。

ですが、すぐにそれを言ってしまったのでは、
自分の不注意で招いた事故が、どういう事態になるのかを考えないままになってしまいます。
初めてのギプスに松葉杖状態でテンションが高めですしね。

「どうしよっか?」 「うーん・・・」

可哀想ですが、困った雰囲気と、ちょっと怒った雰囲気を。

何と言えばいいのか、というよりも、
そもそもどういうことなのかが、彼にはよくわからないのでしょう。

ですが、彼の今後を考えると、印象に残るような経過のアプローチをすることが最善です。

「あと2週間。 代役はいません。
きっと、歩くのは無理でしょう。
代役がいれば、あんなに頑張って練習したけど、出たいのに出られないってこともあるわけ。
でもね、今回はボクしかいないわけ。
できないってのが、一番困るのよ。
だから、どうしたらできるかな?ってことを考えよっか」


「じゃぁ・・・座ってやります」

言わせました、ちょっと無理やりですが(笑)

本番まで2回のレッスンでしたが、振付変更にも動じることなく、堂々と演じていました。
自分に自信があることと、責任感があることの証でしょう。。

彼の演技を観たお母さま方が、「おじいさん役の男の子が、グイグイ引っ張ってる感じでしたね。スゴイですね」と、口々に褒めてくださいました。


2年生の終わりから始めたピアノ。
見違えたのは、リョータくんだけでなく、お母さん。
ここまでいろいろありました、本当に。

「発達障害の集まりに行っても、
お母さんたちと話してみて、表面上は受け入れてるようにみえるけど、
本心は違うんだなってことを感じることが、よくあります」


こんな言葉をお母さんからお聞きして、あぁ、ぐりが言うことはもうないなって思いました。

「やっぱり、(親が)自分で気づかんとね」とも。

うんうん、そうかもしれません。
リョータくんのお母さんのように、素直に反省の言葉を口にできるって素晴らしいですね。
思いがけない嬉しい言葉に胸がいっぱいで、うなずくだけでした。

きちんと挨拶ができて、礼儀正しく、素直で謙虚。

お父さんと、お母さんのなさる通りに、彼はやっているだけなのだけれど、
それが、今では彼の一番の強味になっています。
子どもは育てたように育ちます。

スポーツ系と、ピアノの習い事だけで、ここまで適応力を身につけることは、なかなか容易なことではありません。
このご両親、そして、ご家族の結束あってこそのことです。

発表会の翌日は、ご両親揃って筋肉痛だったとか(笑)
お疲れ様でした。
リョータくんは、ミュージカルで、お父さん、お母さんを驚かせようと、頑張っていましたよ。
いろんな意味で、思い出に残る夏休みになりましたね。  


Posted by ぐり先生 at 18:35Comments(6)療育ピアノレッスン

発表会の写真 こぼれ話

2014年09月02日

トオルくん、5年生。
彼は、難治性の病気と共に生きています。

発表会で、作文を発表してもらいました。

最初の1行だけ手伝って、
後は、トオルくんが自分の言葉で書いた文章です。


ぼくは、今、5年生です。
3年生の12月からピアノを始めました。
最初は下手でした。
緑色の本になってから楽しくなりました。
自分から「ピアノをやりたい」と言いました。
今は、やって良かったなぁと思っています。
発表会の曲は、とてもむずかしかったです。
今までで、一番練習しました。
そしたら上手になりました。
今、ぼくは、ピアノをひくと、もっと弾きたいと思います。
今日は、ぼくは、初めての発表会です。
きんちょうするけどがんばります。



『最初は下手でした』『そしたら上手になりました』 と、
自分が素直に感じたままを書いているところが、とても好感をもてます。


後日、お母さんが発表会の写真を選びながら
「トオルは、写真があんまりないけんねぇ」と、ポツリ。

生後、間もなく手術をしてから入退院の繰り返しだったトオルくん。
あぁ、そうか・・・と、胸がつまりました。

筋肉が弱いのも症状の一つだそうで、
ピアノを始めた当初は、か細い指でバラバラに動くはずもなく、
小さい音を出すのが精いっぱいでした。

もちろん体力もなく、学校だけで消耗し、フラフラでやってきては、
ピアノの前で、うつらうつらしたかと思うと、ゴンッと頭をぶつけたり(笑)

手指が硬く突っ張った状態だったトオルくんを知っているお友達が、
ピアノを弾くトオルくんをみて、大変に驚かれたそうです。
また、ミュージカルをしたり、カメラに向かって笑顔でピースする姿にも
ビックリなさったそうです。

「以前はカメラなんて向けたら、スグうつむいて拒絶でした」と、お母さん。


えええええええええええええええええーーーーーーーーーーーっ?!
どんだけ暗いコやったと?(笑)


なんて。

体験レッスンに来たときのトオルくんを思い出されます。
ずっと黙ってうつむいたまま、鍵盤の下にあるツマミをネジネジネジネジ・・・
取れちゃうかと思いました(笑) うそだよん。

「私も、この子がそうだったって、最近忘れてきましたけど」なんて、お母さん。

いえいえ、そんなことは・・・と、また胸がつまります。


彼が発表会で演奏した曲は、『ピアノランドマーチ』『踏まれた猫の逆襲』の2曲です。
音楽的にも非常によく弾けていました。
全員2曲のノルマでしたが、それをこなしたのは彼だけでした。
1年半前は指が動かなかった彼が、どれほど『じょうずになった』かをお察し頂けると嬉しいです。


写真ひとつとってみても、聞いてみないとわからないことってありますね。

お母さん方が、皆さん、楽しそうに写真を選んでいらっしゃったお姿に、
ぐりも隣で見ていて、とてもハッピーな気持ちにさせてもらいました。

そして、改めて写真の良さを感じたのと同時に、
たくさんの人を笑顔にしてしまうような写真を撮ってくださった、
かつきしょうへいさんに撮影をお願いして良かったと心から思っています。

みんなありがとう。


*:.。..。.。o○*:.。..。.。o○*:.。..。.。o○*:.。..。.。o○*:.。..。.。o○*:.。..。.。o○*:.。..。.。o○

写真家 かつきしょうへい
おでかけふぉとぐらふ 福岡の家族写真出張撮影 http://odekakephoto.com/  
タグ :療育


Posted by ぐり先生 at 18:53Comments(6)療育ピアノレッスン

劣等感の塊

2014年06月20日

しゅーちゃん、1年生。
ぐりの教室に通ってくださるようになって、もうすぐ1年です。
年長さんだった しゅーちゃんは、とても恥ずかしがり屋で、あがり症で、とても怒りんぼ。
スグ立ち上がったり、部屋の隅っこにうずくまったり、
腕を組んでそっぽを向いて「ボクは嫌なんだ」と、癇癪を毎週繰り返していました。


「だってボク、どうせできないんだもん」

たった6歳にして、こんなにも強い劣等感を抱き、心を閉ざしているのかと思うと、胸が痛んでなりません。

「せんせい、ボクの気持ちわかる?」

しゃくりあげて泣く しゅーちゃん。


もう、教えてもらうことすら、抵抗を感じている様子。
凸凹っ子たちの多くは、間違えるということに ことさら過剰なまでの反応を示します。

『失敗するからやらない』 『失敗したくないからできるのにやらない』と、
頑な姿勢をとってしまい、場の流れを止めたり、むやみに叱られてしまったりと、
悪循環に陥って、状態は更にひどくなる一方です。

年齢が上がり、集団生活を長く経験してからレッスンにいらっしゃる生徒さんほど、
大人が想像する以上のダメージを受けていることは多いですね。

まずは怒る、泣く。

このパターンがすっかり出来上がった状態だった為、
しゅーちゃんは、この1年、ほぼ、こういったことに時間を費やす日々でした。
上書きするってだけでも、生徒さんにとって本当に大変な作業ですが、
その前に、かたく閉ざされた心をほぐすのに、とても時間がかかりました。
教室に来るまでもグズグズ言って、お母さんも毎週、さぞやグッタリだったことと思われます。


幼稚園を休みがちだった、しゅーちゃん。
家で何をしているか尋ねると、「iPadでゲームしてます」というお母さんに
「言わないで!言わないでよー!
ズル休みだと思われたくないんだよー!」

と泣きだした ことがありました。

自分の状態、状況は、『彼なり』には理解しているのでしょう。

しゅーちゃんのお母さんは、長年のストレスから眠れなくなったり、考え事が止まらなくなったりと、
体調を崩してしまわれています。
しゅーちゃんの向上といえども、それは『変化』になり、
それが、お母さんにとってはストレスやプレッシャーにもなってしまうということがあります。

安定を求め、変わらないことを選択する。たとえそれがどんなに過酷な状況であろうとも。

しゅーちゃんが、少しずつ自分をコントロールできるようになれば、
お母さんも心が安らげるだろうと、思っています。

「自閉症の本を読んでいて、この人たちの身体症状って、わかる!と思ったんですよ。
私も虚弱で、子どもの頃、ここに書いてることとおんなじでした」

と、先日、しゅーちゃんのお母さんが、こんなことを仰ってくださいました。

発達障害のことを『子どものこと』としてだけでなく、
ご自分に置き換えてみるという目線を持ってくださることに、とても前向きさを感じます。
そうすることで、お子さんへの理解が深まると同時に、
お母さんご自身のことでも、今まで気付かなかったことが見えてくることがあります。

『自分を知る』ということは、新たな発想のきっかけになるのではないでしょうか。


1年生になった先日、しゅーちゃんが、手のひらをマジックでガシガシと真っ黒にしてきたことがありました。
まだ真新しい筆箱もお揃いの姿に様変わり・・・。

運動会も終わり、どの学校も授業が少しペースアップする時期です。
玄関を開けた時の しゅーちゃんの顔から日に日に表情がなくなっていくのが気がかりです。

授業中、どうしているのか尋ねると、「やってみようとは思うんだけど、、」
しおらしくしている しゅーちゃんですが、
『ただそこにいるだけ』の時間を毎日過ごしているのかと思うと、やるせなさでいっぱいになります。


学校は、なんとなくこなしてくれたらいいと個人的には思っています。
ただ、これだけは続けられた、というものを一つでいいので、見つけてくれることを願っています。
それが後々大きな自信になるのです。そういう方向付けをしていきたいと思っています。


どんなに泣いたり怒ったりしても、「ボク、もっとピアノ弾きたかったなー」と、
いつも名残り惜しそうに帰る しゅーちゃん。

ひらがなの練習をしながら、「ボクね、学校では丸がいっぱいのプリントもあるんだよ」と、ヒソヒソ。

うんうん、知ってるよ。

しゅーちゃん。
いつもを応援していますよ。
ありがとう。  


Posted by ぐり先生 at 13:58Comments(7)療育ピアノレッスン

狩猟犬の訓練から考える

2014年03月28日

ぐりの親戚に狩猟犬の競技会で何度も優勝しているという人がいます。
繁殖もやっていて、全国各地から犬を求めてたくさんの人が訪れるそうです。
とても特殊な世界で、あまりよくわかりませんが、
すべては血統らしく、競走馬と同じだとのことです。
(それでも、ぐりにはよくわかりませんが・・)

今回は、これは犬のことを言っているんだよね?と、
あまりにもレッスンで感じることと状況が似すぎているために、驚いた話を書きます。


「訓練は、犬が喜んで積極的に自分からやるようにせなあかんねん」

あ、関西弁(っぽい)・・・(笑)

「失敗よりも、成功した時のイメージを強く残してやるねん。
そしたら、犬もどうすればいいかがわかって、この人にもっと褒めてもらおう!って頑張りよる」

もちろん、犬との間に信頼関係があっての話だけれど、
似たようなことが、ぐりの教室の生徒さんたちにもあります。

ぐりのレッスンをご覧になったことがある方はご存知かと思われますが、
かなりのペースでも、生徒さんは皆、意欲的にこなしていきます。
「へぇー、そんなこともできるんですね」と、時々見学なさった親御さんが、思わ呟かれることも少なくありません。
普段はマンツーマンレッスンですから、生徒さんも張り切りますし、
不意に口をついて出たときのそんな言葉こそが、お子さんの自信を大きく膨らませたりもします。

「そやろ、犬も子どもと同じやで」

犬は安産の象徴でもありますが、狩猟犬は1度に7匹生~12匹生まれるそうです。
皆、それぞれに性格や気質、才能があって、それぞれに最適な訓練をすれば、
その狩猟犬としての能力を最大限に引き出すことができますが、
いくら素晴らしい才能のある子犬でも、素人が育てると、単なるペットにしてしまい、
無駄吠えや飼い主を噛むなどのトラブルをおこしてしまうこともあるそうです。
愛情と甘やかすことを間違えてしまうのでしょう。


「生まれてスグ、動けるようになった時に、親のとこから離れて一番動き回る犬がおるねん。
これ、めちゃめちゃ好奇心旺盛っちゅーことやね。
これから訓練するのには、好奇心旺盛なのはええね。おもろいヤツの素質ありやね。
でも大人しいヤツも、またええねん。慎重なヤツやったりする。
ま、結局どれもみんなええねん。
それぞれの特性を見極めて、それに合った訓練の仕方すればいいだけのことや。
才能ない犬とかおらんし。あ、訓練する側の才能までは知らんで!ははははっはは」


なんだか、ぐりの教室の誰かさんの顔が思い浮かびます(笑)
そして、こう続きます。

「でもな、好奇心旺盛やったり、慎重すぎるっちゅーことは、普通の人には手に負えんっちゅーことでもある。
もし、お客さんが、一番元気がいい犬が欲しいゆうて、いいですよってなったら、
よくわかってる人は、俺が、きちんと訓練までしてから引き渡すねんけど、
たまにな、いえいえ自分でしますからゆうてな、まぁ、そのまま引き渡すこともあんねん。
そしたらな、1年くらいしてから、すみません、ゆうこと聞かんで困るから引き取って下さい、ゆーてつれてきよる」

「俺な、どんなにゆうこと聞かんていう犬たちも訓練して試合に出してるけど、
せっかく才能もって生まれてきてんのにやな、間違った訓練してくれるとな、まずそれ直すことに時間取られるやん。
早い犬なら生後半年くらいで試合に出て、どんどん経験こなしていくのにやな、大幅に出遅れとるがな。」

犬の寿命年数を考えれば、急ぐ理由が理解できます。

いろいろな訓練の技法があるようですが、
同じ技法を誰でもがやったからと言って、決してうまくいくとは限らない。
『技法』ではなく、『誰が施すか』が、それぞれの犬の能力を引き出す、重要なカギになっているようです。

それは、その犬の『狩猟犬としての一生』を左右してしまうということになってしまうと言っても、過言ではないのかもしれません。

特に最後の言葉は、正しい訓練、試合というものが、犬たちにとって、どれほど心を満たすものなのかを知っており、
また、それを犬たちに叶えてあげられる技術を持った、心の底から犬を愛している人の言葉だと、強く感じるものでした。


ぐりの教室の生徒さんたち、難病や発達障害、ダウン症の生徒さんたちも含めて
本当にどの生徒さんも学びたい欲求が強く、素晴らしい感性、才能に感服することも多々あります。

今回この犬の話を聞いて、ぐりはとても勇気をもらいました。
そして、生徒さん方における、責任の重さも改めて思い知ることとなりました。

どんな人でも、何か一つは誰にも負けないものをもっています。
ピアノでもいいし、ピアノをやってるうちに何か他のものが見つかるきっかけになるかもしれません。
それだけ複雑な要素が絡んでいると考えています。

集中するとかいうよりも、夢中になる、熱中するということを伝えたい、そう思っています。  


Posted by ぐり先生 at 18:53Comments(11)療育ピアノレッスン

線から面へ

2013年12月16日

とらちゃん5年生。
ぐりの教室に通ってくださるようになって、そろそろ丸4年です。

なんとも重苦しい時間が、ずいぶんと長いこと続いた生徒さんです。
<参照記事>:点から線へ



「読解力がないんだと思って必死にドリルをやらせてきましたけど、
読解力とかじゃなかったんですね・・・もっと、その前の段階だったんだなって・・・」


お母さんの言葉です。

●日常では当然のこととして、誰もが敢えていちいち教えることなんて思いつきさえもしないことを
誤って認識している、または、わからないのに勝手に自分の方法でやってしまう
●衝動的にやってしまった後で気付く、または気付かずに何度もやってしまう

それは、見え方だったり聞こえ方だったり、受け取り方などの感覚が独創的なことがあり、
またそれは、本人にとっては最初からそうだから気付かないのはもちろんのこと、
親御さんでも気付かないことが多く、努力不足だとか集中力がないとかで片付けられていることも少なくありません。

そのためのトレーニングを4年生の1年間の予定で始めたとらちゃんでしたが、
お母さんの強いご要望で5年生の1学期まで延長することとなりました。

レッスンしていると、本当にいろいろと気付くことがあるのですが、
早期に取り掛かり、根気よく取り組み続けることで、
自分なりのやり方を見出したり、改善することができます。

そしてなにより、お母さん方が、お子さんへの接し方がわかることで余裕をもてるようになります。
お母さんの笑顔は、一番の栄養ですね。


夏休みになって最初のレッスンの日

「あのね、成績があがっとったとー!!」と、
ピアノの前に座るなり、嬉しそうに話してくれたとらちゃん
「実は、そらの成績があがってたんです」と、
後でレッスンにみえて、これまたピアノの前に座るなり静かに喜びをかみ締めて話されるお母さん

このトレーニング課題は、成績を上げる為にやっているわけではありませんが、
結果的に理解力が増し、成績が上がることにもつながるのでしょう。

自信って、本当に大きなチカラになりますね。

「4年生から・・プリントし始めた頃からしか、ピアノの記憶がないけん、うん。」
とらちゃんは表情が明るくなって、自分が感じたことを自分の言葉で言えるようになりました。

とらちゃんのことを自分でなんとかしようと、おひとりで奮闘なさっていたお母さん。
ここへ到達するまでの、お母さんとそらちゃん それぞれの頑張り、苦しみを振り返ると
喜びもひとしおだったに違いありません。

「今まで、そらに本当に申し訳ないことをした」
もちろん愛あればこそのことなのですが、反省なさるとともにご自分を責めて、
お母さんは、毎週ご自身のレッスン中に涙をこぼしておられました。

お母さんの涙をよく目にし、すぐそばで、ぐりとの会話を耳にしているとらちゃん。
「お母さん、人の世話ばっかり焼きすぎるっちゃん!」と、笑って言えるほど理解しています。
「でも、すごい努力家」とも言っていました。

お母さんの真面目で不器用な人柄をよく見てとれて、きちんと受け入れられているなと感心します。

それは、たくさんの体験、多様な価値観をもったたくさんの人に触れさせようと
機会あれば とらちゃんを一人でいろんなイベントに参加させていた
これまでのお母さんの努力の成果です。

可愛い子には旅をさせよ
とらちゃんは、お母さんが育てたかったように育っていると、ぐりは思っていますけどね。


論理的な思考力や判断力は、音楽の解釈を より深めるうえでも、必要となります。

聞き取れる、読み取れる、感じ取れる能力が高まると、受け入れる能力も高くなります。
受け入れる能力が高いということは、柔軟な発想をする力と、
多くの情報を得られるいうメリットがあります。

選択肢が増えるということは、自分がイメージしているものを表すのを
より可能なものにしてくれるのではないでしょうか。

『自己表現のツールのひとつ』としてのピアノ
それは、ひとりの世界を楽しむものでもいいし、誰かと楽しむものでもいい
ぐりは、ピアノをそんなふうにも考えています。


「私、ちょっと変わっとーかも」
「うん、知っとーよ(笑)」
「え?そーなん?!ふふふ」
「先生はアナタよりも変わってますけど、なにか?」
「え、そうなの?でも、クラスのみんなも変わっとーとよ!」
「え?みんな同じの方が怖いやろ」
「うーん。でも、うちの家族も変わっとるっちゃん」
「ぷははは!そうか(笑)」
「もう、みんなすっごい変わっとーけん!」
「うん。変わっとっていいし、変わってる方がいいと思うけど、人を不快にさせんようにしようね」
「あー、うん」

太字は、とらちゃんです。

これまでの とらちゃんは、自分の周りの人や物事に、
全くと言っていいほど関心がないような振る舞いでした。

目線は宙に浮き、おかしなタイミングでのぎこちない挨拶、
お母さんも交えて雑談していても、自分に話しかけられていないという感じで上の空だったり、
まるでソコに誰もいないかのように、ぐりの前をスタスタ歩いていってしまうような・・・

そんなとらちゃんが、自分と周りとの違いを意識するようになりました。

楽しそうにぐりと話しているとらちゃんを見て、
「そんなにきちんと話せてスゴイな。
お母さんは、とらの年頃のときは、そんなふうに上手く人と関われなかったから」

また涙ぐむお母さんです。

とらちゃんを見ながら自己理解を深めていくお母さん。

4年生からの とらちゃんの目覚しい人間力の成長は、
とらちゃんのお母さんが、家事、お仕事、とらちゃんの習い事の送迎を忙しくこなしながらも、
ご自身もピアノのレッスンを続けられ、『自分と向き合う時間』を意識して確保なさり、
自分を変えようと努力なさったからこそなのです。

私たちは境遇を改善しようとは思いますが、
自らを改善しようとはなかなか思わないものです。
境遇を改善できない理由は、まさにここにあります。   by ジェームズ・アレン


ここに気付いて行動に移すことは、なかなか簡単なことではありません。
いくつになっても人は変われるし、ずっと成長し続けることができる、
そんなお母さんの姿をそらちゃんは、いつもそばで見ています。


「ほらほら!先生が、とらちゃんをビシッとしつけるけんね、覚悟しとき!」
「え、うそ?!マジでーー!!!」
「あー、うるさいうるさいっ!ほら、ちゃんと身体をこっち向けてからドアを閉めんね!」
「うん、わかっとーよ」(笑)

いま、とらちゃんと、そんなことを笑いながら話せていることに、
ぐりは心から安堵しています。


「きれいな曲やね」

そんな言葉を素直に口にできるようになった貴女のピアノの音が、最近少し変わってきました。

いまの貴女なら素敵な英語の先生になれると思います。
『教える』という職業を将来の夢に選んでくれたことを 
ぐりは大変嬉しく思っています。

とらちゃん、ぐりはいつでも応援しています。
ありがとう♪  


Posted by ぐり先生 at 08:35Comments(8)療育ピアノレッスン