2013年01月05日

二十年後

「れんしゅうしてきたよ!」 「あのね、きのうも そのまえも、あ、来る前もれんしゅうしたんだよ!」

最近ぐりの教室のチビッ子たちが、口々に言うようになりました。
どうしたんだ・・・調子狂うな。

(,,・`ノo・)<そんなに急いでうまくなんなくていいから。せんせいのお仕事なくなっちゃうじゃん。
あんまり練習しないほうが、チョーーーうまくなるんだよ!!

「うそやん!れんしゅうしますよーーーーだ」

なんて。


昨年のミニコンサートの後に、元教え子から連絡をもらって会う機会がありました。
ぐりが先生1年目、当時の生徒さんの中では最年長で
5年生から高校2年までレッスンしたアユコ。

ま、先生ってのは誰しもそうなのかもしれないけど、
ぐりも若かったせいもあり、ぐりがやってきたことをアユコにも望み、
また、アユコもそれに応えて本当によく練習し、ついてきてくれる生徒さんでした。

発表会では毎回プログラムの1番最後。
ショパン、シューベルト、ブラームス、ドビュッシーと、
コンクールと同等の曲を弾く程の実力がありました。

発表会前の最後のレッスンで、隣でアユコの演奏を聴いていて鳥肌がたったおぼえがあります。
彼女も何かを感じたのか「もう1回弾いていいですか?」と、再度トライするも、
あの『不思議な感覚』の共有は、あの1回こっきり。

後にも先にも、そんな生徒さんは今のところアユコだけです。
そんな彼女も30歳。

「先生あのね、引っ越すときにお母さんが、もう弾かんやろ、売るけん!ってピアノ売っちゃった(笑)」

潔い!!

ずいぶんと時間は経ちますが、
親子での『やりきった』感じが伝わってきて、ぐりも清清しく笑いました。


その後の世代からは、アレ?なんか違うぞ・・と戸惑うことも多かったと同時に
ぐりのメッキ(笑)も急速に剥がれ落ちて、早々に現在のレッスンスタイルに至るわけデス。

あ、端折り過ぎましたか(汗) 


さてさて、ぐりの教室は大人の生徒さんもたくさんいらっしゃり、
笑いすぎて瀕死状態に追いやられる方が多数の中、
ひたすら真面目なレッスンの方も稀に(汗)おいでになります。

その『朱鷺』のような生徒さんのお一人、M田さん。

物心ついた頃には、お姉さんと一緒にピアノを習っていて、
少年野球のユニフォーム姿でレッスン、その後グラウンドへ。
と、6年生まで続けられたそうです。

きっときちんとしたご家庭でお育ちなんだろうなと
そのたたずまい、挨拶の仕方、話し方などから伺えます。


お母さん想いの優しい青年で、仕事もスポーツもバリバリこなします。

過去記事参照:ピアノで親孝行、 ピアノでありがとう、 大人の習い事


ぐりの教室に通ってくださるようになって、丸3年が過ぎました。
大人の方の趣味のピアノのレッスンって、実は意外と難しい。

特に、ぐりの教室を選んでくださる方々は、
『自分』を持っていらっしゃる方ばかりで、ピアノを弾くことでさらにご自身をを高めようとなさっているように感じます。
実際そこまで考えていらっしゃらなくても『豊かに暮らす』意識が高く、結果としては現実そうなっていらっしゃいます。

いつも仕事がメインでピアノが負担にならないよう、
でも上達していき、しかも楽しく・・・そこの加減が難しいのです。

優秀な会社員であるM田さん。
お忙しい中「練習してなくてすみません」と言いながら、
時間をつくってくださりレッスンにみえてくださいます。
「コレを子どもたちはやってるんですねー。最初からこんなレッスンだったら全然違いますねー!」
などと笑いながらも、ひたむきにピアノに向かわれる姿勢には本当に頭が下がります。

また、これほど誰かの為にピアノを弾きたいという想いが強い人にも会ったことがありません。


M田さんは、6年生でピアノをやめてからも、時間があればピアノを弾いていたそうです。
中学では合唱コンクールの伴奏も任されるくらいだから、かなりの腕前だったのだと思います。
ピアノ、ほんとに好きなんですね。。。

そして社会人になってから、またピアノを弾きたいとおもわれるようになり電子ピアノを購入。
やはり、習わないと弾き甲斐がないと、当時の勤務地で教室に通われることに。

こうして現在もピアノを続けていらっしゃるということは、
M田さんのお母さんとしても嬉しいことでしょうし、
M田さんに最初にご指導なさった先生も、これを知ったらきっとお喜びになるに違いありません。


前半に記述のアユコの後の世代の生徒さんたち。
ピアノをきっかけに『音楽が根付いた生活=豊かな暮らし』を送ってもらいたい
子どもたちが巣立った後、そういえば発表会であんなことあったねと思い出を語ってもらいたい
そう願ってレッスンしました。

そのうちの数名は社会人になってから再びレッスンに通ってくれたり、バンドを組んだり、
音楽に携わる職についたり、大学で新たな楽器を始めたりという知らせを聞くたびに
少しは伝えることができていたのかなと、ちょっと嬉しく思います。


いま、練習してきたことをキラキラした目で嬉しそうに話す子どもたち。

納得できるところまでやりきるのもいい
たとえ十年後はピアノから離れていたとしても
二十年後、自分の時間が持てるようになったとき
音楽がある豊かな暮らしの中で
ふと、ピアノが恋しくなるような

それはそれで、なかなかいいものですね。


M田さんのレッスンを機に、
今までのたくさんの生徒さんたちの顔が思い浮かび、懐かしく振り返るのと同時に
現在の生徒さんたちの未来がとても楽しみに思えます。  

Posted by ぐり先生 at 01:51Comments(4)大人のレッスン