生かされて生きる、生きて生かされる、そこにもピアノ。

2013年08月28日

トオルくん4年生。

3年生だった昨年の12月から通ってくださっています。

難病のために生後4ヶ月で心臓の手術を受けてから、
3年生まで毎年手術で入退院の繰り返しだったトオルくんです。


初めて会ったトオルくんは、小柄で年齢よりも少し幼い印象でした。
緊張してサイレントピアノのツマミをずーっとネジネジしていたのを覚えています(笑)

3ヶ月程して、市外からレッスンに通うことにも慣れてきたトオルくん。
長い病院生活からの経験値の少なさも気になり、
4年生になると同時に能力開発と並行したレッスンをスタートしました。

5ヶ月間のトオルくんの経過で特に目立った変化を取り出してみます。

1ヶ月め
『宿題に要する時間が、劇的に短くなりました!!!』
という、お母さんからのメール。
頻繁に鼻を鳴らす癖、瞬きをする癖も、ほとんど見られなくなっていました。

身体を整えるプログラムで、ぐりと生徒さんとの間に少しずつ安心と信頼が生まれます。
お互い床に座って目線も同じですし、笑いながらじゃれ合っている感じにもなりますしね。
緊張が和らぐことで、徐々にチックも緩和されます。

2ヶ月め
プリント課題の最中でした。

「よーし頑張れ!急げっ急げっ」  
「待ってくーださーい」 
「うん、待ってるよ」              
「待ってるぅ?・・・んふふふ」 

なんてやりとりを何度か繰り返したかと思うと、いきなりトオルくんの目に涙が。

「えっ?なに?どうした?」驚いて聞くと、
「いんや〜、ボク嬉しいとぉー」(●´I`●)

あまりの純粋さと無邪気さに言葉をなくし、頭を撫でることしかできませんでした・・・。

以前は療育も受けていたけど、常に手取り足取りで、
トオルくんのような自分でやりたい欲求の強い子どもには物足りず、嫌がっていたため、
『自分でやり遂げた!できるまで待っていてくれた!』という満たされた気持ちが強かったのだろう

と、後でお母さんに聞かされました。

ぐりの教室で課題に取り組む生徒さんたちは、
おそらく家では見られないような集中力と意欲的な姿です。
しかも、みんな負けず嫌いときています。

人間は本来、知恵をもった生き物なのだからね。
いつも先回りして子どもの知恵を埋もれたままにしているのは、大人たちかもしれません。

でも一旦教室をでると、『やる気スイッチ』は速攻でオフになる場合もあるらしく
『ここにいるときは、自分はできる』という確認の場所になればいいかなとも思っています。

3ヶ月め
リトミックのジャンプの仕方に変化。
それまでは紙相撲のように身体を突っ張ったまま飛び跳ねていましたが、
膝のバネを使って高く高ーく!!跳躍できるようになりました。
学校で走るときに、腿があがるようになってきたのも、この頃だそう。

後日、この半年前、体験レッスンに来てくれた頃・・
成長に障害のある病気のトオルくんは、両足の長さをそろえる為に、
片方の足を装具で固定していたと知ることとなり、ビックリするやら焦るやら。
 
今では欽ちゃんのように(ご存知?)空中で足を開いたりと、バリエーションが増えました(笑)

そして急に身長も伸びて、引き締まった顔つきになりました。

『レッスン後の帰り道、お喋りが止まらない』と、お母さんからメールを頂いていたのも、この頃。

トオルくんが自発的に、レッスンに向けて学校でペース配分して体力を調整、
レッスンでリフレッシュして、疲れをリセットして元気になっているようだ

と、おっしゃっていました。

恐るべし4年生(笑)

課題が多すぎたかな?と心配するぐらいの方が、子どもたちは、集中して脳が覚醒するようです。
学校では習わないことのほうが多いけど、
『もっと知りたい、できるようになりたいっ!』という気持ちがとても伝わってきます。

4ヶ月め
安定してピアノの練習をしてくるようになって1ヶ月。
お母さんの上手な働きかけのお陰で、自信満々の顔で弾いています。

ピアノを弾く動作は、身体の軸や重心の掛け方も身に着き、
かなりの運動量、情報処理量、感覚刺激になります。

そして反復練習って、本当に大切。

体調を崩して1週間学校に行けずに病院通い。
1学期の終了式は欠席し、病院、学校へ荷物取り、1日がかりの大移動の最後にピアノ。
自分からは病気のこと、疲れたといったようなことを一切口にせず、
最後までレッスンをやり通したトオルくんでした。

そういえば、トオルくんの口から言い訳や弱音は一度も聞いたことがないなぁ。

5ヶ月め
課題をこなす量が大幅に増えました。
レッスン時間ギリギリまで、テンポよく分刻みにピアノも含め、いくつものことをやっています。
うまくできないことは、ぐりが止めるまで何度も挑戦する姿がみられます。

夏休み、ショップの1日店長を体験。
「すっげー興奮した」そうで(笑)機械でバーコードを読み取る作業が楽しかったそうです♪ いい顔してる。

入社、退社式で壇上にあがるとき、辞令を受け取るときなど、全ての動作がスムーズになったのは、ここ数ヶ月のことです。
私がそばにいると、チラチラ私を見るので、イライラします。
程よい距離をたもつのが、お互いの精神衛生上、大事だとあらためて確信。
今回は、最初から意欲的で、不安な様子を見せることなく、私としてはOK。よく頑張ったというより、興奮するほど楽しい経験ができて良かったね、です。


以上、お母さんのメールから抜粋です。

レッスンを始めてからのトオルくんの一番の変化は、
生後まもなくからの入院生活で、乳幼児期に体験できていなかったことを
この半年で、一気にさかのぼって駆け足で取り戻すかのような行動がみられたことでした。
(おしり〜とか言って喜んじゃったりね)

そして、おそらく『トオル店長』を機にステージが1つ上がりました。
いまのトオルくんは、顔つきが違います。
そして、これからも未知数に伸びていくでしょう。

挨拶の仕方、玄関での靴の脱ぎ履きや、レッスンの準備片付けの様子を見ていて、
トオルくんが基本的なことをきちんとしつけられていることは、一目瞭然。
課題をモリモリこなし、ピアノも練習して自信がつくにつれ、
学校や、日々の生活でもたくさんのことを吸収し、本当に見違えるようになりました。


トオルくんのお母さんは、いろんな人にトオルくんを任せることができる方です。
それは、お母さんがトオルくんを信じているから、
そして、それはお母さんが、お母さんご自身を信じているからでもあります。


授かった子どもさんに、重い病気があるとわかったときの親御さんの心情は、
察するに余りあるものがあります。

首もすわらない小さな小さな体にメスを入れ、何本もの管につながれて、たくさんの注射・・・
子どもに詫び、自分を責め、代われるものなら代わってあげたい と、
親なら誰もが思うはず。

「この子が習い事をするなんて、、、すごいことです」

体験レッスンのときのお母さんの言葉です。

「大変だったなんて、考えてる余裕はありませんでした。
お医者さんに言われるがままに動くだけです。
ま、わたしも休めるし、いいんですけど(笑)
もしかしたら、この子が大きくなっても抱えてまわらなきゃならないのかも・・・って。
よし、わたしは身体を鍛えなきゃ!!なんて思ってました」


サラッと明るくおっしゃるお母さん。
いつも人前で明るい笑顔をみせる人には、
その奥には深い悲しみや苦しみを抱えていることが多いような気がします。

「うちの子なんて、全然マシですよ!!」

親子でいったいどれだけのものを見たり、聞いたりしてきたのでしょうか。
幼いトオルくんの瞳には、どのような光景が映っていたのでしょうか。

ご家族で常に命と向き合い、命の危険と隣り合わせに過ごされてきた方の言葉は、
非常に深く、重みを感じます。

そんな方が、ぐりの教室の門を叩いてくださったことに感謝するとともに
自分を振り返り、より一層気が引き締まる思いです。

1ヶ月目、ドアを開けると初めて大きな声で「こんばんはー」と言えたときの笑顔。

2冊目のテキストを渡した日、目をキラキラさせて早足で部屋を出たトオルくん、
「新しいテキストを胸に抱きしめて駐車場まで歩いています♪」と、お母さんからの実況メール。

学習発表会の『聖者の行進』を連弾して「ボクたち、ウマが合うねー」と嬉しそうに笑った顔、
「ボク、ピアノ習っとってよかったー」とお母さんに言ったこと。

喜びをストレートに表現できることは、素直に感謝を伝えているのと同じこと。
「ありがとう」は簡単な言葉だけど、一番美しく、パワーがある言葉です。
素直って、どんなことよりも大切で素晴らしい才能だと、ぐりは思っています。

お母さんが育てたように、トオルくんは育っていますよ。
家にいること、ご飯を食べていること、走っていること、笑っていること、勉強していること・・・
何気ない、どんな些細なことにも『生きている、嬉しい、ありがとう』と、喜びいっぱいに包まれて。

トオルくんのお母さんに出会って、『四季の歌』を思い出しました。

ぐりが子どもの頃、いつも母が台所で口ずさんでいた歌です。

トオルくん、君に出会えてよかった。
ぐりは、いつでもトオルくんを応援しています。

ありがとう。


同じカテゴリー(療育ピアノレッスン)の記事画像
春遠からじ
やってやれないことはない
そして普通級へ
ピアノで磨かれる感性
実りの秋 発表会の収穫
臨機応変に~ハプニングにも学びあり~
同じカテゴリー(療育ピアノレッスン)の記事
 春遠からじ (2017-04-25 21:00)
 やってやれないことはない (2015-05-01 12:12)
 そして普通級へ (2015-03-31 15:15)
 ピアノで磨かれる感性 (2015-02-16 15:38)
 実りの秋 発表会の収穫 (2014-10-20 23:58)
 臨機応変に~ハプニングにも学びあり~ (2014-09-08 18:35)

この記事へのコメント
先生のところでやって頂けることをそれぞれ全部別々のところに通うとすると、
いったい、何ヵ所に行き、どのくらいの時間と費用がかかるのでしょう。

考えただけでもめまいが、、、

最初からぐり先生だと、どれほど高い技術を受けられて恵まれているのかがわからない方もおられるのではないでしょうか。
先生、お体大切に。
Posted by みるみる at 2013年08月28日 15:28
療育での指導者のスキルによる成長の差は大きいです。
ゆるい指導なら1年いっても変化がないこともザラですよ。

どんな人でも才能や良いところを引き出せる先生なのですね。
Posted by 有馬 at 2013年08月29日 19:30
病院にいても、お母さんや人の温もりを感じて育ったのでしょうね。

私の娘も難病で、産まれてすぐに心臓手術、長い入院生活でした。

病弱だからと甘やかして我が儘に育てても、それすら幸せだと思う気持ちも理解します。

でも私は、親にいつ何があるかわからないという気持ちで、傍目には厳し過ぎるのかもしれませんが、何でもさせています。

トオルくん、お母さん、頑張りましょう。

先生は、いろんなことを気付かせてくださいますね。
Posted by デイジー at 2013年08月30日 00:59
僕は、こんなご時世だからこそ息子に楽器をさせたいと思っています。
学歴よりも、どんな幼少期を過ごしたかどうかが子どもの将来を決めるんじゃないでしょうか。

安価な物は、なぜ安価なのか考えればすぐにわかるはず。
月謝は千円でも安く、でもハンバーガー店には毎週行く、それで質の高い教育を受けられるはずがないと思いますよ。
Posted by 虎太朗くんのパパ at 2013年08月31日 20:30
虎太朗パパさん、ボクも同じ意見です。
ボクの息子もバイオリンやっていますよ。

ぐりさんって人は、本当にどんな人でも伸ばしてしまうんだなぁ。
Posted by ぐっさん at 2013年08月31日 23:06
ぐり先生が、いつもおっしゃるように、学校に行ける年齢の間はいいですけど、それから先どうするかですよね。

子どもに病気や障害との前向きな付き合い方を教えて下さる人がいるのは、親として大変ありがたく心強い存在です。
Posted by なっちママ at 2013年09月03日 14:35
以前、ぐりさんのピアノを聴いた方が、それまで楽しく喋っていたのに、急に無口になって気分良さげにお酒をおかわりしていましたね。
お店の方も「酒が進む演奏ってのがある。ぐりちゃんのピアノにやられてるね」と笑っていましたよね。

本当に心に響く音。
また聴きたいです。
Posted by 茉莉音 at 2013年09月06日 15:52
こちらのお母さん、すごいですね。
『何が効いたのか』をきちんと把握されています。
大病されたお子さんにも一般的な感覚で接せられています。

これ、発達障害の親子だと的外れなこと言います。
「自分がこうしたからできるようになった」とか「学校や療育で、この前できてた」とか。

そんな感じだから、だんだん疎まれていくんだと思います。
もろ特性っすけどね。
Posted by 通りすがり at 2013年09月09日 01:44
いつも更新楽しみにしています。

たくさんの生徒さんが、遠くから通っていらっしゃるのですね。

お子さまに、良い先生を探されたり、様々な体験をさせようと動かれる親御さんのご尽力は素晴らしいです。
必ずお子さまの笑顔となって返ってきますね。
今までのご苦労や辛さも、吹き飛ぶことでしょう。
Posted by みっちゃん at 2013年09月16日 18:37
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。