2013年10月31日

言葉の遅れ、知的な遅れを伴う自閉症のお子さんに才能の種をまこう

言葉の遅れ、知的な遅れを伴う自閉症のお子さんに才能の種をまこうゆーすけくん、1年生。
知的な遅れを伴う自閉症。

今年の4月から車で片道1時間かけて通って下さっています。

ゆーすけくんと初めてお会いしたのは、入学式を間近に控えた雨の日。
ゆーすけくんよりも、「発達障害の人のピアノの習い方、みたいな本を読んだのですが・・・」と、
鞄をゴソゴソ探すお母さんの方が、とても印象的でした。


そんなの読まなくても平気(^▽^)/

好きな歌をたずねると、ゆーすけくんと手をつないで
『しっぽのうた』を代わりにうたうお母さんの
あまりにも懸命な姿に熱いものがこみ上げてきました。

ゆーすけくんのお母さんのように
障害をもったお子さんに「趣味をもって欲しい」と願うお母さんは多いでしょう。

しかし、レッスン半年たった今、
当時を振り返る余裕をもてるようになったお母さんからお聞きした言葉は

「正直、あの当時はピアノはハードル高いものだと思っていました」

でした。


弾けるようになんてなるのかな・・・
いや、ならなくてもいい、楽しければ。
楽しいよね?楽しいはず、ねぇ楽しいでしょ?
どうかお願い・・・楽しんで・・・


切実な願望と、『きっと息子は楽しんでいるんだ』という、
お母さんご自身へ言い聞かせるような思いだったのかもしれません。



どんな経過を辿ったとしても、最終的には辿り着ければ良い

ぐりは、そんな考え方に基づいて指導させて頂いています。

障害がある人もない人も、取り立てて指導に差はありません。
というか、そういう使い分けは難しい。


まず、お母さんに
その『発達障害だから』っていう考え方やめましょうか
という提案をしました。

「あぁ・・・今までそんなこと仰ってくださる人がいなかったので・・。
何を検索するにも『発達障害』とか『障害』とか付けていました・・あぁ・・・」


頭を抱えるお母さんです。


後日、この会話がきっかけとなり、
ゆーすけくんのお母さんが、
今までは無理だとあきらめていらしたことにも
行動をおこすきっかけにつながるなんてことは、
その時には予想もしない、ぐりなのでした。

あまり詳しく書けませんが、
「先生の、あの言葉を聞いて動いてみました・・・
了承を得られたんです!!
もう、涙が出るほど嬉しいです!!」

というお電話を頂いて胸がいっぱいになりました。



さて、入学と共にスタートしたゆーすけくんのレッスン。
この半年の ゆーすけくんの成長ぶりを書き出してみます。

1ヶ月め
来るなり荷物を置くイスに突っ伏したり、
絶えず動きながら意味のない言葉を発していました。

この時点では話の意味は理解していますが、
レッスン中の会話によるコミュニケーションは成立していません。

自分で弾くピアノの音に、耳塞ぎがみられました。
ですがこれは、回を重ねるごとに減っていきました。

2ヶ月め
自分で弾くピアノの音への耳塞ぎはみられなくなりました。
リトミックのピアノ伴奏の低音には、やめてという反応をします。
鍵盤をバンバン叩くことから、指でメロディーを弾くことへ移行。
挿絵と歌をすぐに全部覚えました。

鉛筆を上手く持てずにヒョロヒョロな線。
それまでご家庭でお母さんも苦戦なさっていたようですが、
鉛筆を持てて書くことが格段にアップ!

書く作業の向上でペースアップです。

3ヶ月め
運動会が終わり、お母さんがダウン。
就学前準備からの半年間、お母さんの心労は、すでにピークを越していたと思われます。

きっと寝込んでる間も気が休まることなんてなかったし、
今だって常に頭の中は、ゆーすけくんのことでいっぱいに違いありません。

生徒さんたち以上に、お母さん方の健康状態は気にかかるところでもあります。


学校の宿題の詩をすぐに暗唱できるという才能。
支援級でのリトミックの取り組みでも、
ゆーすけくんのリズム感はズバ抜けて良いと褒められたそう。

4ヶ月め
支援学級内でのトラブル発生。

言葉でもっと伝えられたなら
回避や助けを求めることもできただろうと思える出来事でした。

「もっと早い時期に先生に出会えていたら・・」
とお母さんからのありがたいお言葉。

自分で自分の命を守れないということは、こういうことなのかと、
悔しさと、怒りと哀しみに体が震えたとともに、
もっと言語面を急がねばと、決意したのでした。

怒りのエネルギーを前向きに

たとえ子どものいたずらとはいえ、許しがたい出来事でしたが、
「いつまでも怒ってる場合じゃない、今まで以上に息子と頑張ります」と、
決意を新たに素早く気持ちを切り替えられるお母さんに敬服。

なかなか言えることではありません。


ゆーすけくん。先生、ゆーすけくんと早くお喋りしたいな。きっと楽しいよ!
先生、楽しみにしてるからさぁ、はやく喋れたらいいなぁー

トレーニングをしながら毎度語りかけました。
そして、次の課題へ移ろうとした時のことです。

「んんーっ!!」
と、悲痛な叫びと同時に、ぐりの両手を掴んでグィッと引き寄せました。

『やめないで、もっと教えてよ!!ボク、喋れるようになりたいんだ!!』

そう訴えるかのような哀しい目が、今でも脳裏に焼きついて離れません。

ゆーすけくん自身に『明確な意欲』が芽生えた瞬間でした。

5ヶ月め
夏休みに入り、次々と大きな変化が続きました。
まず、エコラリアが、たくさんでるようになったこと。

レッスンでは、今まで発語らしい発語が見られなかったのですから大きな前進です。

『しりとり』が得意になり、字も安定して書けるようになりました。

「さようなら」を連発してしまうので、
「挨拶は1回だけ」と予告することでスムーズになりました。

5本指を使って本格的にピアノを弾き始めました。
指をバラバラに動かすということは、かなり難しい動作です。

指が自立すると、ピアノを弾くときにバランスをとろうとして腹筋や背筋、様々な筋肉を使い、
脳の機能が、今よりももっとたくさん働くようになります。

「ぐ、り、せ、ん、せ、い」(〃▽〃)と、
初めて名前を呼んでくれました!!!!!!!!!!!!!!!! 感激っ!!

家でもよく歌うようになったとお聞きしたのも、この頃。

6ヶ月め
レッスンは順調です。
足し算ができるようになっています。
お箸の練習もスタート。

オウム返しではなく、きちんと答えられることがポツポツでてきました。
いきなり会話がかみ合うことに、調子が狂うお母さんです(笑)

急激な伸びの追い風は、当分おさまりそうもありません。


初めてお会いした日に感じた、
お母さんの苛立ちと焦り。

『わからない』という漠然としたことほど不安なことはありません。

どうしたらいいのか、どこから手をつけたらいいのか、
誰も発達障害について明確な答えを教えてくれないし、
調べても調べても見つからない答え。


「ひとつのことを調べるだけでも、すっごい時間がかかって・・・」
と、お母さん。

焦りは段々と怒りに変わります。
一般的に発達障害の療育といわれているところで
成果の得られないことばかりが続くと不信が募り、
次第に心を閉ざすようになってしまいます。


「先生のところにくるまでは自分以外、誰も信じられなくなっていました」

お母さんの言葉です。


明確な治療法のない中で、
「もっと酷い人もいるから」「うちも同じ」などという言葉は、
何の慰めにも解決にもなりませんし、
ゆーすけくんのお母さんが求めているものであろうはずがありません。

無責任に言い放たれる『大丈夫』という言葉は、
苛立ちに余計に拍車をかけるに過ぎないのです。

レッスンを重ね、ゆーすけくんが変化していくにつれ、
お母さんも少しずつ本来のご自身を取り戻され、
ずいぶんと穏やかな顔になりました。

お母さんが自信をもつことこそが、とても大切だと考えています。
少し先までの見通しと、今どういうことをやればよいのかがわかるだけでも、かなり安らぎますね。


いま、やっと、お母さんに子育ての喜びを味わう時間が
ようやく訪れました。

不思議なもので
得意なことが1つでもあると、
少々なことがあっても、ま、いっかぁ』と思えるものです。


ゆーすけくんのそんな姿を目の当たりにして、
「良いところを伸ばすとは、こういうことなんだと、今なら実感できる」
と仰っていました。


この半年間で、ゆーすけくんは見違えるほどの急成長を遂げました。
しかし、なにが一番変わったかって、それはお母さんだと
ぐりは思っています。


誰だって才能の種を持って生まれてくる。
ゆーすけくんの種は、学校で習ったり、みんなが知ってるやり方では芽が出ないだけ。
白線の上を歩かせようとするから、はみ出ることを恐れるけど、
最初から歩けるところを歩いてれば、たまには白線を踏めることもある。
でも、線なんかなくったっていいし、自分で描いてもいい。

ゆーすけくんに自立を促しながら、ご自身の自律の精神を養う。
ゆーすけくんの可能性を引き出すことは、ご自身の可能性も引き出すことでもある。
ゆーすけくんが生まれた意味、ゆーすけくんからは学ぶことばかりだと。



そこにお母さんが気付いた時から、全てがうまく回り始めたように思えます。
それは、言葉でいうほど簡単な道のりではありませんでした。

子どもは親の背中をよく見ていて、それをちゃんと受け継いでいきます。
お母さんご自身が、日々、希望を持って、強くたくましく、楽しんで生きる姿は、
しっかりと、ゆーすけくんの生きる姿となっています。

ゆーすけくんの種は、いつ、どんな花を咲かせるのでしょう。
ぐりは、とても楽しみでなりません。

ゆーすけくん、きみに出会えてよかった。
ぐりは、いつでも ゆーすけくんを応援しています。

ありがとう♪



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この記事へのコメント
「白線なんて、自分で書いておしまいっ!書いたもん勝ちさ!」

言うでしょ?ぐりさんなら(笑)

素晴らしいお母さんだね。
Posted by ニシダヒガシダ at 2013年10月31日 15:30
できる人というのは素直に受け入れて、行動が素早い。
お母さんブラボー!

しかし、何なのでしょうね。
ぐりさんの、その不思議なパワー。
Posted by 内藤 at 2013年11月01日 08:46
みんな遠くから熱心に通ってるんですね。
でも、私もその気持ちわかります。
ぐり先生みたいな人なかなかいませんもんね、指導力もすごいし。
Posted by nao at 2013年11月01日 15:35
連投すみません。

種と白線の話、大好きです!!
先生の話は、いつも面白くてわかりやすいww
コメント欄の言葉、先生なら絶対言うしww
Posted by nao at 2013年11月01日 15:40
そしてこう続く。

「白線も、みんなが歩いたらそのうち黒くなって
しまいには消えるから安心しなさい」

安心ってww ぐりさんww
Posted by ニシダヒガシダ at 2013年11月02日 01:35
ははは。
ぐりさんなら言いそう(笑)

種の方には『猿カニ合戦』みたいなことをリアルで言うと思うな(笑)
でも、きっと脅すんじゃなくて「ねー、ねー、なんしよん?」でしょう(笑)

頭の回転が速くてユーモアがある人だけど、言ってることはかなり深いときありますよね。

それにしても、本当に素晴らしいお母さんですね。
水筒の出来事、僕も胸が痛めました。
頑張れ!
Posted by ぐっさん at 2013年11月02日 20:23
ぐりさんが言いそうなことを書く会?笑

「芽、出したいんでしょ?出そっかぁー」って、コチョコチョってして「ほら、出たじゃん」かしら。

私なら・・・というか、大多数の先生は、
レッスン中に親御さんにそんな勝手な行動とられたら、、、

無理です。

最初からぐりさんのお教室だと、どれほど恵まれて、どれだけのことを許してもらえているかわからないと思います。
Posted by フェリーチェ稲森 at 2013年11月03日 00:29
僕もその大会『白線の部』に参加していいですか(笑)

おそらく、ぐりさんのレッスンを受けて気付かないうちに白線の上を歩いていると、

「なんで白線の上を歩くの!歩かなくていいから!!」

全員ポカーン(;゜◇゜)みたいな(笑)

療育とは全然違いますね。
なんだか意識が高い親御さんたちの秘密基地みたいですね。(笑)
Posted by ぶっち at 2013年11月07日 14:38
普通に暮らしている一般の人が、このように素晴らしい文章に書き表してもらえることは、この上なく幸せなことです。

おそらく先生とお母様は、とても高いところで通じあっていらっしゃるのでしょう。

この記事を読まれたたくさんの療育手帳をお持ちのお子さんのお母様が、励まされることと思います。
Posted by なっちママ at 2013年11月12日 10:51
人は苦しみの中でも幸せをみつけることができます。
それは、強くしっかりと支えられたときです。

ぐり先生、本当に素晴らしいお方です。
Posted by 茉莉音 at 2013年11月14日 16:56
ぐりは、きっちり教えるからね。
10年したら、大きな差になって勝ち組を実感なさるはず。
Posted by ごっつ at 2013年11月16日 12:37
 
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