2014年06月20日

劣等感と癇癪と、時々お母さん

しゅーちゃん、1年生。
ぐりの教室に通ってくださるようになって、もうすぐ1年です。
年長さんだった しゅーちゃんは、とても恥ずかしがり屋で、あがり症で、とても怒りんぼ。
スグ立ち上がったり、部屋の隅っこにうずくまったり、
腕を組んでそっぽを向いて「ボクやりたくないんだ」と、
不安と癇癪強めなお子さんでした。


「だってボク、どうせできないんだもん」

たった6歳にして、こんなにも強い劣等感を抱き、
心を閉ざしているのかと思うと胸が痛んでなりません。

「せんせいは、ボクの気持ちわかる?」

しゃくりあげて泣きだす しゅーちゃんです。

もう、声をかけられることすら抵抗を感じていて
何もしたくない、みたくない、聞きたくない
と全力で拒絶してきます。

●失敗するからやらない
●失敗したくないからやらない


頑な姿勢をとってしまい、場の流れを止めたり、むやみに叱られてしまったりと、
悪循環に陥って、状態は更にひどくなる一方です。

療育センターに通ってからレッスンにいらっしゃる生徒さんほど、
想像する以上のダメージを受けていることは多いですね。


とにかくすぐに怒る、からの黙り込む、そして泣く。
しゅーちゃんは、すでに、このパターンが深く刻まれていました。

困り行動の修正もですが、
そのかたく閉ざされた心をほぐすことに、とても時間を要しました。


教室に来るまでもグズグズ言って お母さんを困らせ、
時には、しゅーちゃんを抱えるようにして連れてこられることもありました。
お母さんには、いつも本当に頭が下がります。


園を休みがちだった、しゅーちゃん。
家で何をしているか尋ねると、「iPadでゲームしてます」と、おっしゃるお母さんに
「言わないで!言わないでよー!ズル休みだと思われたくないんだよー!」
と泣きだした ことがありました。


園や学校は、なんとなくこなしてくれたらいいかなと思っています。
『これだけは続けられた』『これは好き』というものがひとつでもあると、
不思議と「ま、いっか」と思えたりもします。

今はゲームが、しゅーちゃんの『心のよりどころ』なのかもしれません。


1年生になった先日、しゅーちゃんが、
手のひらをマジックでガシガシと真っ黒にしてきたことがありました。
新品の筆箱も同じく真っ黒です。

1学期の運動会が終わると、
どの学校も授業が少しペースアップする時期。

ちょっと大変になってきたのかなぁ。

授業中、どうしているのか聞いてみると、
「やってみようとは思うんだけど、、」
ポツポツ話してくれるしゅーちゃんですが、
『ただそこにじっとしているだけ』の時間を毎日毎日過ごしているのかと思うと、
どんなにか辛く、苦しく、疲れるだろうと、
しゅーちゃんの気持ちが痛いほど伝わってきます。


レッスンでは、どんなに泣いたり怒ったりしても、
「ボク、もっとピアノ弾きたかったなー」と、
いつも名残り惜しそうに帰る しゅーちゃんです。

一緒にひらがなの練習をしながら、
「ボクね、学校では丸がいっぱいのプリントもあるんだよ」
と、ヒソヒソ耳打ちしてきました(笑)

うんうん、そうだよね!!上手にできるの知ってるよ♪

『わからない、うまくできないことへの抵抗のイメージ』が強すぎて
上手にできることの意識が薄れてしまうのだろうと思います。

わかっていること、よくできることがたくさんあることを
ぐりは よく知っています。
しゅーちゃんが、その部分に意識を向けられるよう促していきたいと考えています。

ですが、しゅーちゃんが初めて『できること』をぐりに教えてくれて、とても嬉しかったことを覚えています。
その調子です!!


しゅーちゃんのお母さんは、長年のストレスから眠れなくなったり、
考え事が止まらなくなったりと、体調を崩してしまわれています。

困難を抱えるお子さんの親御さんの
精神的、肉体的なご苦労は想像をはるかに超えるものです。

お母さんご自身がお辛い中で、
お問い合わせくださり、通ってきてくださることに感謝とともに
お母さんの しゅーちゃんへの想いに
本当に頭が下がる思いです。

親の愛って尊いですね。

しゅーちゃんが伸びていくことを望まれていらっしゃいますが、
教室へ通うこと、ぐりと話すことは、
いまのお母さんにとって, とてもエネルギーを必要とする作業ですし、
プレッシャーにもなってしまわれるのではというのも
ぐりが心配していることのひとつです。

しゅーちゃんが、少しずつ自分をコントロールできるようになれば、
お母さんのお気持ちも安らいでいかれるのではと思っていますが、
当面の お母さんのご負担も気にかかるところです。


「自閉症の本を読んでいて、この人たちの身体症状って、わかる!と思ったんですよ。
私もずっと虚弱で、子どもの頃、ここに書いてることとおんなじでした」

と、先日、しゅーちゃんのお母さんが、こんなことをおっしゃってくださいました。

お母さんご自身のこれまでの辛く大変だった思いをご理解していただくことで、
今まで気付かなかったことが見えてくることもたくさんあるのではないでしょうか。

発達障害のことを『子どものこと』としてだけでなく、
ご自分のことに置き換えてみるという目線を持ってくださることを本当にありがたく思いました。


お母さんが子育ての喜びを味わい、
ひとつでも多くのご家族で楽しい想い出を作っていただくことが
ぐりの願いです。

しゅーちゃん、お母さん。
いつもを応援していますよ。
ありがとう。



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この記事へのコメント
ぐり先生のお教室を続けられないって、
よほどのことだと思います。
Posted by フェリーチェ稲森 at 2014年06月21日 20:58
発達障害と関わるのは、本当に大変だと精神福祉医療関係に携わる者としても思います。

お子様よりも大人の方(保護者)の方が、二次障害などの複雑な要因が絡み、トラブルの発端となることも多くございます。

そのような方からの危害にお気をつけ頂くとともに、どうぞお体をお大事に、一人でも多くのお子様の笑顔の為に、今後もお教室の発展を心よりお祈り致しております。
Posted by 海江田 at 2014年06月22日 13:33
ぐり先生のところのようなレッスンは、なかなか受けられません。
Posted by デイジー at 2014年06月23日 19:28
障害プロデューサー。
と言っても、生徒さんや保護者のどんな失礼なことにも、
ただ黙って受け止めて、ひたすら生徒さんの笑顔の為だけにレッスン。
かといって全然偉そうにしないし、肉体労働だね。
常にレッスンのことを考えて、勉強している姿を誰にも見せない。
頭が下がるよ。
Posted by ぐっさん at 2014年06月23日 20:07
ぐり先生みたいなピアノの先生になるのが私の夢です!
Posted by nao at 2014年06月23日 21:47
お母さんが、そのような精神状態でも、ぐり先生を選ばれたことが救いですね。
早くご回復なさって、子育てを楽しんで頂きたいです。
子どもは、すぐ大きくなりますから。
Posted by 茉莉音 at 2014年06月29日 12:30
言わない優しさ、見なかったことにする優しさ、気づいてないと思わせる優しさ

愛と厳しさは表裏一体。
笑ってる時が怖いwwし、叱ってくれww
Posted by ニシダヒガシダ at 2014年07月01日 22:35
 
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