個人レッスンの醍醐味

2014年12月04日

もうすぐ丸4年を迎えるアッコちゃん。

大きな設備会社の事務として、
5日おきの締めに忙殺されそうになりながらも、
いつも残業の合間を縫って、仕事帰りにコツコツと地道に通い続けてくださいます。



「ちょ!!もう、ぜんっぜん練習してないけん!!」
と、強めに言葉を吐き出して、おもむろに弾き始めたブルグミュラーの『バラード』

途切れることもなく、とても躍動感のある素敵な演奏でした。
ぐりが聴いた、今までのアッコちゃんの演奏の中で、一番最高の表現でした。

そう。
ついにやってきました、アッコちゃんにも。

ゾーン体験

バッターボックスに立った野球選手が「球が止まって見える」とかいう、アレです。

『練習していないから、弾けなくてもいいか』というリラックス。(←よくないです 笑)
『真剣にレッスンを受けよう』という緊張。
『ぐりが勝手にアッコちゃんのレッスン基準を引き上げて1年』という技術向上と精神の一体化。

2分とない、あっという間の短い時間でしたが、
諸々のコンディションなど、全てが整った瞬間の出来事でした。


劇画タッチの記事に続いて、今年2度目の体験です。スゴッ!
前回は、弾き終えたと同時に「ワァーッ!!」と大興奮でしたが、
今回は、感動というよりも静か。

「あれ?なんか弾ける。指が勝手に動く、あれ?ココ間違えんで弾けた、とか思いよった」


高揚と冷静が同居する不思議な感覚。

味わった人だけがわかる、この特別な感覚の積み重ねが、
ピアノを弾く喜びとなり、さらに充実した生きる喜びにもつながると思っています。

ぐりの生徒さんたちの中には、こういった感覚を知っているお子さんが何人かいます。
そういうお子さんたちは、『どこを目指せばいいのか』が、わかっています。
本物、いいものを知るという意味は、ソコにあるのではないでしょうか。


今年にはいってからのアッコちゃんの演奏は、ガラリと変わりました。
以前までの楽譜の音を鳴らすだけの演奏から、表現、タッチ、音色に至るまで、
かなり厳しい要求をするようにしました。

劇画タッチの記事にも少し書きましたが、
それまでのレッスンは形式的に1曲終わると、それで終わり。
1個目の積み木を置いたら、2個目の積み木は上に重ねるのではなく、
1個目を横にずらして、その場所に新たに2個目を置く。
3個目4個目と、それをずっと繰り返すような感じでした。

それも悪くはないけどね。
「この曲、もう1か月した?あ、終わり?終わり終わりーっ!はいっ次」
いったいこの人は、いつまでこんなことを続けるのだろうか・・・。
そんなことを思いながらの4年目。

「取り組み方が変わったってのは、わかる。だって、先生、途中で立ち上がるっちゃもん!!」

いつもの軽い感じでやりすごすような箇所も、千本ノック的に集中特訓。

それまでとは違う真剣な表情も見せてくれるようになり、、
負けず嫌い精神に火がついて、弾けるまで何度も何度も挑戦する様子が増えました。

ごめん、ちょっと熱くなりすぎたね・・・という時も、
「楽しかったー!おもしろいねぇ」
と、以前のレッスンでは耳にすることのなかった、そういった言葉をお聞きするようにもなりました。

今では見違えるような上達ぶりで、
ぐりと同じように盛り上がったり、息をひそめたりしながら
音楽の空間を共有する喜びを楽しんでくださっています。


初めてアッコちゃんに会った人は、その強い個性的な空気感に圧倒される方も少なくないでしょう。
ぐりも、その一人でした(笑)
でも、話してみると、その強烈なエネルギーが、一瞬にして彼女に対する興味深さへと変わる、不思議なキャラクターをおもちです。

そんなアッコちゃんが、ピアノを始められたのは、お父さんがご病気で亡くなられてから半年のことでした。

最初は、そんな話は全然聞かされておらず、
今と変わらず、ドアを開けたその瞬間から互いに噴き出すような、朗らかな生徒さん(笑)

その夏、『初盆』という言葉を聞いて、初めて事実を知り、
いつも笑いの絶えなかったそれまでの日々を振り返って、ぐりは大変なショックを受けたのでした。

話がそれますが、
昨年の夏、ぐりは、首から下が動かなくなった愛猫を1年半の介護の末、看取りました。
学ぶことも多く、機会があれば、そのうちブログにかくこともあるかもしれません。
猫がいなくなった次の日からも、いつもと変わらずレッスンの日々でしたが、
出会った頃のアッコちゃんのことを考えたりもしました。

その話を笑顔で静かに聞いてくれたアッコちゃん。
「でも、そんな大変な感じとか、手ぇ抜いてるとか、全然なかったよ」との言葉にホッとしたとの覚えています。

火葬した後、初めて目にした猫の骨に、不謹慎にも感動の声をあげてしまった話をすると、
アッコちゃんも、お父さんの骨のあまりの白さに、哀しいけど感動して興奮したそうで、
しんみりした空気も、すぐにいつもの笑いに変わったのでした。


「お父さんが亡くなる前に、
“あと10年生きたい、まだやりたいことがたくさんある” 
って、ずーっと言ってたのを覚えてて、そうか、悔いの無いように生きないけんなーっ て思って。
それで、テレビでピアノが入ったきれいな曲を聴いて以来、いいなと思っていたピアノをやろう!」


と、始められたピアノ。

「あの時、なんで先生のところに問い合わせられたんやろ?チョー人見知りなのに(笑)
今の私には、あの時みたいなエネルギーがないっちゃんねー。
やっぱり、お父さんがココに行きなさい!みたいなのが、あったのかなぁー。
まだしつこく通うけん!よろしくお願いします。ふふふふふ」


なんて。

いえいえ、ぐりの方が、アッコちゃんのお父さんからアッコちゃんを介して
いくつになっても素直で謙虚に学ぶ姿勢を持ち続け、
自分を律して、諦めないことの大切さを学ばせて頂いています。


いつもブログを読んでくださって、「あの男の子、ホントに良かったねー」なんて言って、
まるで自分のことのように喜んでくださるアッコちゃん。
とても繊細で慈愛に満ちた人だなぁと感じます。

そういう何気ない一言に、アッコちゃんの人柄を感じさせ、
また、それもお父さんから受け継がれた、たくさんのものの中の一つだと思うと、
いつでもそばに、大切なお父さんを感じられますね。
きっと、アッコちゃんがピアノに取り組む姿に、お父さんも喜んでいらっしゃると思います。

「私は変わってない」と、アッコちゃんはおっしゃるけれど、
音が変わる、演奏スタイルが変わるということは、自分では気付かないことも多々ありますが、
良くも悪くも意識が何かしら変わった、ということなのですよ。

アッコちゃん
最近のあなたのピアノは、少し控えめではありますが、意思を持ち、とても美しく柔和な響きがします。
会社で憧れの女性上司のようになりたいとおっしゃっているけれど、
今のあなたなら、きっと叶うでしょう。
忙しくなると眠れなくなるそうですが、体に気をつけて頑張ってください。

ぐりは、いつでも応援しています。
ありがとう。


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この記事へのコメント
やはり、ぐりさんのお教室を続けられないという方は、よほどのお方なのでしょうね。
年齢を重ねるに連れて、叱ってくれたり道を説いてくれる人はいなくなるものです。
そんな中に御自身の身を置かれるとは、素晴らしい生徒さんですね。
きっと、お父様のお導きでしょう。
Posted by 安河内 at 2014年12月08日 12:34
スゴイ!!!
生徒さんをその状態までもっていくという
ぐりさんのエネルギーは、半端ないはず。
Posted by なかじー at 2014年12月08日 15:05
ゾーン体験。
親としては子どもに是非とも体験させたいです。
できることなら私も感じてみたいものですね。
Posted by 茉里音 at 2014年12月08日 21:13
私も、先生のレッスンで1どだけあります!!!
ドビュッシーの雨の庭、一生忘れません。
Posted by nao at 2014年12月08日 21:18
一生勉強、素敵ですね。
Posted by 藤島 紀香 at 2014年12月14日 12:42
最近では、ぐりさんのように道を説いてくださるような先生も少なくなりました。
今の言い方ならばメンターというのでしょうが、師を持たないということが、精神科に通う方が多い理由の一つかもしれません。
薬を内服するだけでは、何も変わらない。
Posted by デイジー at 2014年12月16日 08:09
THE MANZAI の華丸大吉の優勝をみて思う。
やっぱり最終的には本物が残るんだなと。
わかる人にはわかる、その差がハッキリする時代なのさ。
だから、どんな先生に就くかで決まってしまうと言っても過言ではない。
どんな先生を捜せるか、が問われるところなのさ。
Posted by ニシダヒガシダ at 2014年12月16日 13:11
類友の法則。
常に知識と技術の向上を心がけているぐりさん。
4年の間にも進化し続けているだろうから、中には途中でブレてきて合わなくなる生徒さんもいらっしゃるはず。
だけど、そういう先生に着いていけるということは、いい影響を受けてアッコさんも成長なさっているのですね。
ボクもしつこく宜しくお願いします。
Posted by ぐっさん at 2014年12月18日 18:20
 
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