やってやれないことはない

2015年05月01日

ゆーすけくん、3年生。
雨の日も、暑い日も寒い日も、お母さんが高熱の日も、
1時間近い道のりを毎週通い続けてくださり、3年目を迎えました。

入学式を目前に控えた頃、
初めて会った ゆーすけくんの状態を思い返すと、
いま、こうして座ってピアノを弾いている ゆーすけくんの姿には、
熱くこみあげてくるものがあります。

参照記事

それまでも療育センターで療育を受けてこられたのですが、
コミュニケーションは、ほぼとれない状態で、
常に意味のない言葉を発して自分の世界に浸るか、絶え間なく動き、
鉛筆でヒョロヒョロの文字を描くのが精一杯。

指をバラバラに動かすことなどとうてい難しいことでしたが、
ピアノを触ることと、歌やリズム遊びは、最初から大好きな生徒さんでした。

昨年の夏、初めてのピアノ発表会に参加してくれた ゆーすけくん。

ソロ演奏は、『山の音楽家』でした。
プログラムを紹介する ぐりに続いて、横から割り込み、「やまのぉーおんがくかぁー」と(笑)



ミュージカル『大きなかぶ』ではキュートなネコさんを演じてくれました。
孫娘、イヌさんに続いて一番後ろが、ゆーすけくんです。

レッスンを初めて程なくしてから、よく歌うようになったという ゆーすけくん。
ミュージカルの練習を始めてからというもの、
こんなにも歌や踊りが好きなのかと、改めて思わされる程にイキイキとしていました。

エコラリアが強いということもあり、
1年生の時からポエムの暗唱能力に優れていることは聞かされていましたが、
音声を聞いて記憶する能力は、特に秀でて
自分だけでなく、他の人のセリフまでも、あっという間に全て覚えてしまいました。

自分のセリフ以外を言わないという認識が難しく、
他の人のセリフも含め、全部言ってしまうところはABAを使って習得しました。

短期間での週1のレッスンと、全体練習が行えない中での難しい取り組みとなりましたが、
適正な療法を的確に用いることで、比較的スムーズに習得できた上に、
今まで目にしたことのないような、ゆーすけくんのキラッキラッした意欲的な笑顔の絶えない、
音楽で心が満たされた時間を毎週過ごせたように感じます。

本番当日のリハーサルで、初めて演技をご覧になったお母さん。
緊張気味の他の生徒さんたちの中で、一番大きな声で、表現豊かな演技を堂々とやってのけ、
ムードメーカーとなって、みんなに勇気を与えた ゆーすけくんに
感極まって思わず拍手をなさる姿に、ぐりも心が温まったことを覚えています。


特別支援学級で、1年生の学校生活をスタートさせた ゆーすけくん。
交流学級での授業参加を外されてしまうという、非常にショックな幕開けで、
お母さんは、やり場のない気持ちに苦しまれることが続く日々だったようでした。

子どものいたずらとはいえ度を越したものや、ケガをさせられるようなことも度々あり、
ゆーすけくんは、状況はわかっているものの、事情をうまく説明できない為に、
お母さんの心配や心労も余計に重なります。

ぐりが、最も危惧する点は、
ゆーすけくんが、一人のときに、
はたして自分で自分の身の安全を守ることができるのかどうか、ということです。

その為には、『何かしら言えて、少しでも指示が通るように』ということを
まずは念頭に置いて、レッスンに取り組んできました。

これは、どの生徒さんにも同じ思いですが、
いつも傍について、あれやこれや教えたり、守ってあげることができないことに、
やるせなさを感じることは多々あり、それは親御さんと変わらない気持ちです。
それだけに、一回一回のレッスンの充実を図りたいと考えています。

ゆーすけくんが、まだオウム返しもままならない頃、
トレーニングの最中、次の課題に移ろうとした ぐりの両手をとって、
「んんーー!!」と悲痛な叫びをあげながら、
まだ続けて欲しいと自分の方へ引き寄せた時のあの顔と声は、今でも忘れられず、
時々思い出すことがある程、ぐりには強烈な印象の出来事でした。

一見、知的に緩やかな成長のようでも、
話せるようになりたい、書けるようになりたい、弾けるようになりたい、
できるようになりたい、みんなと一緒にやりたいという思いは、人一倍強く、
また、それに向けて、ゆーすけくんなりの努力も尽くしています。

発表会を終えてから、本格的にピアノの練習を始め、
この半年のうちに、右手の指をバラバラに動かせて力強い音を出し、
楽譜の読み方も覚えてきています。絶対音感はさすがです!
利き手が自由に動かせるだけでも、生活機能はかなり上がります。

言葉も増え、随分とやり取りはできるようになりましたし、
文章を書いたり、簡単な計算はもちろん、
見通しをたてたり、比べたり、推測したりなど、
多様な課題にも取り組めるまでになりました。

初めて会った頃の ゆーすけくんからは、顔つきから何から見違える程です。

ゆーすけくんのそういった姿は、
お母さんの生き方に、本当にそっくりだと感じさせるところでもあります。

少しでも、ゆーすけくんの為になるのであれば
良いと思われることは、どんなに大変でもゆーすけくんに
というお母さんの愛と情熱は、ちょっと桁違いです。

「この子には頑張らせたいんです。頑張って欲しいんです」
発表会を終えた後に、ぐりの胸を打ったお母さんの言葉です。

あまり多くは相談したりせずに、一人で考え、
アドバイスや調べたことをもとに、ご自身でも黙々と頑張るお母さん。
地道な努力と費やした労力、時間は、他の誰にも引けをとりません。

「あの時はわからなかったけど、今ならこうだったのかとわかります」

自分の力で正面から向き合うからこそ、親子のつながりを強め、
障害の理解をより深めていけるのではないかと考えています。
自分の体験は自分のものでしかなく、その時に得た感覚を誰かが体感することはできません。
答えは自分の中にあり、自分でみつけるものだと思っています。

試行錯誤しながらも、真剣にたくさん数をこなしてきたからこそ、
「今ならわかる」という実感のこもった言葉につながるのです。

そして、「今ならわかる」の積み重ねが、
辛かった日々、必死だったあの頃のお母さん自身をも理解し、
慰め、許すことにもつながるのです。

あの時は、あれが精一杯だった、それでいいと思います。

不本意ながらも、これまでの環境だったからこそ、
たった2年で、ゆーすけくんが、ここまでの成長を成し遂げるまで駆け抜けられたのでしょう。
それは、ほかならぬお母さんの深い愛によるものだと、ぐりは思っています。

お母さんの自信と勇気、そして笑顔は、
ゆーすけくんが強く生きる力を培う大きなエネルギーの源となることでしょう。

白線の上を歩いてくれるといいなと思っていたけど、
今は、たまには白線を踏んでもいるし、歩いてることだってある。
今までは白線しかないと思っていたけど、
赤も青も黄色も緑もあることがわかったら、
ま、どこ通ってもいっか、と思えるようになる。
そのうち太い虹色の線をみつけるかもしれないね。

2年前、体験レッスンの時に
「その、発達障害だからっていう考え方をやめましょうか」と、声をかけるほど深刻だったけれど、
もう、ぐりが励ます必要はありません。
本当にありがとうございます。

ゆーすけくん。

あなたのお母さんは、あなたの才能の種をいったいいくつ蒔いたのでしょうか。
早いものは、芽を出し、葉をつけ始めました。
あなたが咲きたいときに、咲きたいように咲けばいいと、ぐりは思います。

ただ、風が吹いても、大雨が降っても、どんなに日差しが強くても
咲くことを諦めないでいてくれたら嬉しいな。

頑張れ。

ぐりは、いつでも応援しています。
ありがとう。


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この記事へのコメント
「あの時あれが精一杯だった」
他人から見たら、なんだそれくらいということも
あるかもしれない。
一概に比較できることでもないし、状況も環境も
違っている。
似ているかもしれないけど、同じじゃない。

「個性」とか「ひとりひとり」を大切に、とか
きくことあるけれど、「違う」ことしていると、
空気読めないってことになったり。
集団生活や共同生活をするということのなかで、
協調性など、確かに大切だけど。



胸をわしづかみされたような気持ちで何度か
読み直しました。
Posted by 4月の通りすがり at 2015年05月03日 22:41
レッスンの内容や記事をどのように解釈するかで、全然違うものになるのでしょうね。

いつも、とても深いと思いながら拝読しています。
Posted by 仲西 瑞穂 at 2015年05月06日 20:59
魚を与えるのではなく、魚の釣りかたを教える

そんな先生になれたね。
Posted by ごっつ at 2015年05月06日 22:22
お母さんの愛。
そして、それを支える先生の存在。

これからも頑張り続けて頂きたいです。
Posted by 茉莉音 at 2015年05月07日 10:51
ぐりさんと対峙すると、どこか後ろめたい気持ちになる人もいると思う。
それがなぜなのかは、その人が一番よくわかっているんじゃないかな。
だから、ぐりさんの教室を続けられないということは、余程なのだろうし、こうして続けられる人は格段の差がつく。

発達障害をうたった教室は増えた。
だからこそ、よく吟味しなければならないよね。
Posted by ぐっさん at 2015年05月07日 21:33
すごく励まされる。
Posted by なかじー at 2015年05月12日 15:04
先生は、本当に不思議なパワーをお持ちだと思います。
続けた方にしかわからないと思います。
いつもありがとうございます。
Posted by 波多江 しのぶ at 2015年05月14日 22:51
先生のレッスンについていけるのだから、超スゴイお母さんなのですね。

どんなに逆立ちしても、先生の技術の足元にも遠く及びません。
習ったから、真似したからといって、誰も同じようにはできません。
Posted by nao at 2015年05月15日 20:46
 
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