ゆーすけくん、3年生。
知的な遅れを伴う自閉症。
入学式を目前に控えた頃、
初めて会った ゆーすけくんの状態を思い返すと、
いま、こうして座ってピアノを弾いている ゆーすけくんの姿には、
熱くこみあげてくるものがあります。
昨年の夏、初めてのピアノ発表会に参加してくれた ゆーすけくん。
ソロ演奏は、『山の音楽家』でした。
プログラムを紹介する ぐりの横から入ってきて自分でも曲名を発表してくれました笑
ミュージカル『大きなかぶ』ではキュートなネコさんを演じてくれました。
孫娘、イヌさんに続いて一番後ろが、ゆーすけくんです。
レッスンを初めて程なくしてから、よく歌うようになったという ゆーすけくん。
ミュージカルの練習を始めてからというもの、
こんなにも歌や踊りが好きなのかと、改めて思わされる程にイキイキとしていました。
1年生の時からポエムの暗唱能力に優れていることは聞かされていましたが、
音声を聞いて記憶する能力はエコラリア的はありますが、長文でもあっという間に覚え、
自分のセリフだけでなく、他の人のセリフまでも、あっという間に全て覚えてしまったのでした。
『自分のセリフ以外を言わない』という理解に苦労しましたが、
練習の甲斐あって言わなくても平気になりました。
ぐりの教室の生徒さんのお住まいのエリアは
福岡市、福岡市近郊、佐賀と広域すぎるために
全体練習が行えない中での難しい取り組みとなりましたが、
比較的スムーズに習得できたと感じています。
それに、今まで目にしたことのないような、
ゆーすけくんのキラッキラッした意欲的な笑顔の絶えない、
音楽で心が満たされた時間を毎週過ごせたように感じます。
本番当日のリハーサルで、初めて演技をご覧になったお母さん。
緊張気味の他の生徒さんたちの中で、
一番大きな声で、表現豊かな演技を堂々とやってのけ、
ムードメーカーとなって、みんなに勇気を与えた ゆーすけくんに
感極まって思わず客席から拍手をなさるお母さんの姿に、
ぐりも嬉しかったことを覚えています。
ゆーすけくんが、まだ言語の表出もままならない頃、
トレーニングの最中、次の課題に移ろうとした ぐりの両手をとって、
やめないで続けて欲しいと「んんんんーー!!」と叫びながら訴えて
自分の方へ引き寄せた時のあの顔と声は、今でも ぐりの脳裏に焼き付いています。
話せるようになりたい
書けるようになりたい
弾けるようになりたい
できるようになりたい
みんなと一緒にやりたい
という思いは人一倍強いゆーすけくん。
それに向けていつも全力を尽くしています。
レッスンでも、お互いに疲れを覚えることはありません。
発表会を終えてから、本格的にピアノも強化。
この半年のうちに、右手の指をバラバラに動かせて力強い音を出し、
楽譜の読み方も覚えてきています。絶対音感はさすがです!
利き手の指がバラバラに動かせるだけでも生活機能はかなり向上します。
言葉も増え、やり取りの種類も増えましたし、
文章を書いたり、簡単な計算はもちろん、
少し見通しをたてたり、比べたり、推測するチカラもついてきました。
じっとしていられず、意味のない声をずっと発していた
初めて会った頃の あのゆーすけくんからは見違えます。
少しでも、ゆーすけくんの為になるのであればと、
良いと思われることは、どんなことをしてでもゆーすけくんに
というお母さんの愛情と情熱。
「この子には頑張らせたいんです。頑張って欲しいんです」
発表会を終えた後の お母さんの言葉です。
「あの時はわからなかったけど、今ならわかります」
あまり多くは相談したりせずに、一人で考え黙々と頑張る・・
頑張りすぎなくらい頑張り屋のお母さんです。
自分の体験は自分のものでしかありません。
いつも答えは自分の中にあり、自分でみつけるものだと思っています。
試行錯誤しながらも真剣にたくさん数をこなしてきたからこその、
「今ならわかる」という言葉は、とても重みがありますね。
そして、「今ならわかる」の積み重ねが、
辛かった日々、必死だったあの頃のお母さんご自身をも理解し、
慰め、ゆるすことにもつながるのだと考えています。
あの時は、あれが精一杯だった・・・
それでいいと個人的に考えています。
2年という月日。
ゆーすけくんが、ここまでの成長を成し遂げるまでに駆け抜けられました。
お母さんの自信と勇気、そして笑顔は、
ゆーすけくんが強く生きる力を培う大きなエネルギーの源となることでしょう。
2年前、初めてお会いした時に
「その、発達障害だからっていう考え方をやめましょうか」と、
声をかけるほど思いつめられておいででしたが、
もう、ぐりが慰めたり励ましたりする必要もなくなりました。
本当にありがとうございます。
ゆーすけくん。
あなたのお母さんは、あなたに才能の種をいったいいくつ蒔いたのでしょうか。
早いものは芽を出し、葉をつけ始めました。
あなたが咲きたいときに、咲きたいように咲けばいいと、ぐりは思います。
ただ、強い風が吹いても、大雨が降っても、どんなに日差しが強くても
咲くことを諦めないでいてくれたら嬉しいな。
強く生きよう。
ぐりは、いつでも応援しています。
ありがとう。