2019年09月15日

通級から通常学級へ、才能を開花させて公立の単位制高校へ。




リョーくん。
ぐりの教室でのレッスンも9年半を過ぎ、もう高校2年生になっています。

クラシックの定番でザックリとすすめてきて
形式的には小6でブルグミュラーを終えるレベルまでの
練習とレッスンを耐えこなしています。

ある程度の曲は初見でもそこそこ音楽的に弾ける腕前です。

中学校では3年まで同じ担任の先生という配慮をいただきました。
あれほど遅刻や欠席でやり過ごした小学校生活とは打って変わり、
皆勤賞を目指す中学校生活。

級友とは積極的にかかわるタイプではないので
本を持っていったり、図書室や校舎の裏など、
休み時間などを一人で過ごす場所は決めていたようです。

驚かされたのは、中学2年、3年と合唱コンクールの伴奏に立候補したこと。
中2は『COSMOS』 中3は『流浪の民』 ソコソコ難しい曲・・。
いずれもオーディションという形式があり、レッスンでも取り組んで選ばれました。

級友からは「すごーい!!」という称賛を肌で感じ、
初めて人に認められるという大きな経験でした。

ピアノが他者からと自己の承認を満たす存在になったことを確信した経験でもあり、
それはきっとご両親も同じで、これまでのいろんな想いを埋められたのではと思っています。







合唱の伴奏の経験が大きな自信となって、急速に内面と社会性も成長をみせたのでした。


当時、芸人さんが小説を書いて話題になっていたこともあり、
リョーくんも真似して書いてみたいとやっているうちに、
文章力が磨かれて先生に高評価をいただき、
大きな学校行事で全校生徒、保護者の前で弁論のように発表する機会にも恵まれました。

その様子の録画をDVDで拝見したのですが、
もう本当に堂々とした『ザ☆弁論』という感じで、あっぱれ!!です。
誰にならったわけでもないのに・・。

あ、小6のピアノ発表会でのミュージカルの時に、その片鱗はうかがわせていたな。


そして、中3のクラス替えで初めて気の合う友人にも恵まれて、
その友人のお誘いで体育大会の応援団にも立候補するという、これまた仰天ニュース。

運動機能、感覚機能に困難を抱えており、いろいろと大変ではありましたが、
それでも勇壮な姿は、ご両親にとっても思ってもみなかった心に残る体育大会になったことでしょう。


終わり良ければ総て良し。

長い人生の通過点の1つではありますが、
無事に中学校生活を過ごすことができただけでなく、
特性を克服する経験にたくさん恵まれて、
ご家族で充実した気持ちと自信に満たされたことは、
大きな大きな財産になったとことと思います。


そして迎えた高校入試。

もちろん学力も必要です。

それまで提出物など、ほとんど守ったことがなかったですし、
試験勉強というものをほぼほぼしなかったので成績は低空飛行気味でした。

といっても、ノー勉でも5,6割という成績。

文章の読み書きがこれだけできて、雑談も卒なくこなし、
ピアノも初見でかなり弾ける様子からも
能力は秘めているのだろうけど学校の勉強は本当にキライなのだろうなという印象でした。

「勉強なしで、よくその点数がとれるよね?!って、いつも親に言われます」
と、ご両親も感心するやら困惑するやらですね笑


それでも、受験を現実的なものとして意識できるようになると行動も変わりましたね。

皆勤を目指して自己管理をするようになったり、提出物も意識したり、
何よりリョーくんなりに試験勉強をするようになりました。

数学を一緒にやってみると、数式の仰天なところで改行するなどを除いては吸収がはやく、
今まで点在していたものがパタパタとつながる感じで、
それに伴い、中3の後半には成績もついてくるようになっていました。

国語は言うまでもありませんし、英語は洋楽好きのおかげで今のところは勉強いらずです。


『読む、書く、発表する』の自信と能力の高さは、
高校入試でも、作文や面接においては、練習の段階からお墨付きを頂き、
余裕をもって臨めたような印象でした。

そして第一志望の公立の単位制高校に見事合格!!素晴らしい!!

受験勉強は、正味1、2ヶ月といったところだったのではないでしょうか笑

朝が超絶ムリなリョーくんにとっては、単位制というのはピッタリ。
4年かけてカリキュラムをこなす予定です。


高校生になってからも、事あるごとにピアノ演奏の機会には恵まれて
たくさんの人から称賛を浴びているようです。
そして今はもっぱらピアノを趣味として積極的に楽しみ、好きな洋楽の弾き語りがレッスンの主流です。
ここまでの成長と活躍を遂げ、こんなにもピアノと共に歩むことになろうとは、
楽器をご用意してくださったご両親も喜びいっぱいのことと思います。



リョーくんが、ぐりの教室にいらしてくださった時から、
小学生の間、一貫してご両親にお願いしていたことは
学校の成績を追わないで頂きたい、学校はなんとなくこなせたらいい
ということでした。

そのぶん、ご家族で体を使うこと、感性を刺激すること、思い出をつくることに
たくさんの時間を費やしてくださったように思っています。

そして現在、高校生になってからも、
『単位を落とさない程度に』をモットーに、『なんとなーくな試験勉強』
のスタイルで通常運転です。

もしかしたら、学習塾などの環境に入れていれば、
リョーくんの能力なら『学力』という面では、もっと高い結果を望めたかもしれません。

いえいえ。

「やればもっとできたのかな」
それくらいの感想をもてるところをクリアすることが
特性をもった子たちにはベストなこともあります。

教育は必要だと思っています。
ですが、学業優秀ということと、生きていく力があるということはまた別です。

おそらく特性をもっている人は、もっていない人よりも、
発達障害そのもというか、それによって生じる人間関係で苦しむことのほうが多いのかもしれません。

そこに必要なスキルは、
特性からくる機能的なこと、思考判断の傾向などの為に
一般的な学習では習得が難しいことも多々ありますし、
学校や塾では見つかりにくく(言いにくい、言えない言わないというのもある)
ご家庭では日常のこと、当たり前のやり取りとして見過ごされたりもするのです。

親御さんの『できる、わかる、やってる』と、ぐりとのソレに大きなひらきがあったり、
そもそもご家族の生活スタイルや基準が独自性が強めだったりすることもあり、
ぐりのレッスンで明らかになって初めて愕然となさることも少なくありません。

そういったことはリョーくんのご家庭でもみられました。
それでもリョーくんが自分の力でレッスンをこなし、しっかりと積み上げてこれたのは事実です。

そしてこれは、後になって知ったことですが、
第二志望の高校を決める時に、お母さんが口になさった高校は、
まだリョーくんが小学生の頃、てんこ盛りの特性全開で、
「普通に暮らせたらそれでいい、それだけでいい」と、
涙を流されていたときに「ここにしか行けないだろう」と、お考えだった高校でした。
もちろん出番はなかったのですが。


こんなにも、誰の目にも明らかなほどの成長を遂げられてもなお、
親御さんの不安と心配は尽きることはありませんね。
お子さんを愛すればこそです。


思いもしなかった生活はあります。

それは未知の世界であり、頼りないものでもあり、恐怖でもあります。
年齢を重ねれば重ねるほど頭で考え、そういった感情は強く働くのではないでしょうか。

子どもは経験値がなく、何も知らずに飛び込める良さもあります。

もっとも身近な存在が、心配のあまり、
うっかりブレーキをかけることになっていたりもするので気を付けたいところですね。

勉強ができるタイプは勉強したらいいし、
技術が要ることならば早くその道に。

要は、それをどのように使って人の役に立つことができるか、
を考えられるまでになれたらいいなと思っています。

続けた先に道はひらけます。


今の段階でのリョーくんは、
先延ばしと自分のやり方への固執がいささか強めなことを除けば、
この年齢で、ここまでできるのは素晴らしいと
ぐりも学ばなければ思わされることばかりです。

礼儀や所作はきちんと身についており、敬語も使えて気遣いもできます。
伝達や報告、確認がきちんとできます。
大人顔負けの挨拶やお礼もきちんとできて、驚かされることもあります。
場当たり的な思い付きでペラペラと嘘を言ったりすることもありません。
先延ばしと頑張りどころはともかく、これまでの経験から頑張り方や成功で得られるものを体で覚えています。
告知はされていませんが、自分の特性をよく理解し受け入れられています。
好きなことをみつけ、そのコミュニティに積極的に参加する行動力ももっています。


そしてこれは、つい最近のことですが、
自分の行動や嗜好について「ボク、ちょっと変わってるんです」
などと、初めて自然に笑って言葉にしたことがありました。

そういう言葉を口にできるほどに強くなったのか。
あぁ、また1つステージを上げたな。

という喜びを噛みしめながら、彼を見送ったときの清々しさは、
9年半、リョーくんからの大きなご褒美として、
大切に ぐりの宝箱のコレクションの1つとなっています。



長年、遠方より送迎してくださるご両親には深く感謝申し上げます。
リョーくんのここまでの成長は、ご両親の深い愛情あってのことです。

え・・17歳?!

子どもが大きくなるのは、あっという間ですね。
ぐりも歳をとるはずです。

いまはまだ、通過点のひとつ。
どんな道を通ったとしても、辿りつけばいいと思っています。

ぐりは、いつもリョーくんを応援しています。

誕生日おめでとう。  


Posted by ぐり先生 at 03:58Comments(0)療育ピアノレッスン